チンタイム

Web漫画家丸本チンタのつぶやき

宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を観てきた

昨日家族でスタジオジブリ宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」を観てきました。

作品の公開前の情報は上のポスターの鳥のビジュアル1種類のみ。

何も知らないまっさらな状態で映画を楽しめるという経験はそんなにあるものではないですし、制作期間7年ということで、どんなに作り込んでいるんだろうと、とても期待して劇場に向かいました。

が、期待しすぎたのがまずかったのか、おもしろかったかどうかの感想を一言ではっきりいうと、〝おもしろくなかった〟というのが僕の感想となります。

↓個人的宮崎作品ランキング

感想は個人的なもので人によって違うと思います。

僕がどういったタイプの作品を好きなのか知ってもらうために、これまでの宮崎監督の作品にランキングをつけてみました。

1 天空の城ラピュタ

2 魔女の宅急便

3 千と千尋の神隠し

4 ルパン三世 カリオストロの城

5 となりのトトロ

6 風立ちぬ

7 崖の上のポニョ

8 風の谷のナウシカ

9 もののけ姫

10 ハウルの動く城

11 紅の豚

以上です。

僕はアニメ監督としては高畑監督の方が好きで、宮崎監督に求めているのはストーリーや全体の完成度ではなく、アクションやファンタジーの世界観です。

ただ、アクションやファンタジー要素が盛りだくさんでも、上記のランキングから自己分析すると、まじめなテーマの作品や監督の趣味が前面に押し出されているものは、さほど好きではなさそうですね。(※まじめなテーマが嫌いなわけではありません。高畑監督の「火垂るの墓」とか好きです。宮崎監督のまじめなテーマの作品が好みではないということです)

そういう意味で考えると「風立ちぬ」のランキングがやや高めのように思えますが、公開当時に宮崎監督の最後の作品だと思っていましたから、監督の自伝的要素も入っているんだなと感動して鑑賞できたので6位という順位になりました。

そして今回の「君たちはどう生きるか」が何位に入るかというと12位。

最下位です。

見終わった直後には、まぁこんなものかな、まあまあだったな、と思いましたけど、時間が経つにつれ、やっぱりつまらなかった、これに7年も費やしたのか、最後がこの作品というのは寂しいな、という気持ちが強くなってきました。

おもしろくなかった要因を考えてみます。

以下、映画のネタバレを含みます。

繰り返します、

ネタバレを含みます。

君たちはどう生きるか」の細かいストーリーは書きませんが、作品の大まかな構成は「千と千尋の神隠し」と同じだと思いました。

主人公が異世界へ行って帰るというもの。

不思議の国アリスのような雰囲気もありました。

雰囲気で言えば、宮崎作品ではありませんが「思い出のマーニー」感も。

アクションもありましたしファンタジー要素も強かったです。

条件的に考えると僕の好きな宮崎作品のタイプなのに、なぜおもしろいと感じなかったのか?

序盤はおもしろかったんです。

事前情報がなかったということもあって導入部は引き込まれました。

ポスターのサギ男もおもしろいキャラクターでした。

ただ、そこから主人公が異世界に突入してからが良くない。

まったくおもしろくないわけでもないのですが、全体的に弱く、わけのわからない世界が続いていく、という感じ。

掘り下げてみます。

まずキャラクターが弱い

サギ男のキャラは良かったですが、それ以外で魅力のあるキャラがいない。

インコ大王もまあまあ良かったですが… これまでの宮崎作品には印象的なキャラクターがもっと出てきたはずです。

湯婆婆や釜爺、リン、カオナシ八百万の神々、坊。

ナウシカクシャナ、ユパ、クロトワ、巨神兵、テト。

トトロはもちろんのこと、まっくろくろすけ、ネコバス。

かわいいキキ、先輩魔女、ジジ、アルスラ、パン屋夫婦、老婦人と孫。

ラピュタでは主人公たちが溌剌としているのに加え、親方もいいし、汽車のじいさん、ポムじいさん。ドーラ夫婦とその息子たち。やさしくも悲しいロボットたち。敵のムスカまでもが魅力的でした。飛行船などの乗り物も。

数えたらキリがありませんね。

今回の作品にもマスコットになりそうなかわいいキャラが登場しましたけど、シンプルすぎて無個性でした。

これまでのジブリキャラはシンプルでもジブリらしい個性がありましたよね。

今は亡き高畑監督や保田さんがモデルのキャラが登場すると事前に鈴木さんがおっしゃっていたような気がします。

主人公は宮崎駿監督がベース、本を読みすぎて狂い塔(ジブリ)を作った大叔父が高畑監督(+宮崎監督)、主人公を塔へ導く嘘つきのサギ男が鈴木P(ケンカをしながらも助け合い、最後には主人公に友だちと呼ばれる)、サギ男と主人公の間を取り持ち飲み物を注ぐキリコさんが保田さんでしょうか。

ファンタジー世界が弱い

過去の宮崎作品のまとめのような世界が続きますが、そのどれもが弱いと感じました。

死後の世界や夢の中のような世界が延々と続くんですよね。

ポニョや千尋にもそういう死後の世界を思わせるシーンはありましたけど、別の場面が派手だったりおもしろかったり、あるいは可愛いらしかったりでメリハリがあって良かったです。

千尋でのああいう油屋や飲食街が例えばテーマパークに再現されていたとしたら絶対行ってみたい!となりますけど、今回のはまったくそういう気分になりませんでした。

ラピュタハウルの城やキキが住んだ街にも行ってみたいですが…

そう言えば黒澤明監督も晩年、夢の中の世界のようなつまらない作品を作っていましたけど(僕は黒澤明監督の作品も好きです)歳をとるとそうなってしまうのでしょうか。

音楽が弱い

久石譲さんの音楽もこれまでのものと比べて印象的なものがなく弱く感じました。

エンティングの米津くんの歌も、単体で悪いとは思いませんでしたけど、なんか聞いたことのあるような米津くんの歌で、宮崎作品のラストに必要かと言われれば疑問。

背景もなんとなく違和感

もちろん僕なんかでは描けない素晴らしい背景ではあります。

自分の画力を棚上げして過去の宮崎作品との比較から考えています。

ネットの評判を見ていると背景に関しては絶賛の声が多く、絵の上手いイラストレーターの方でもその芸術性を評価されているのを目にしました。

僕の個人的な意見としては、人物と背景の一体感が弱いと感じました。

今回の背景は絵としては素晴らしいですが、リアルでありつつもややぼんやりとしたタッチで、パキッとした絵のキャラとの馴染みが悪かったような。

これは映画終了後に、僕が口にする前に12歳の娘が同じことを言いました。

映画鑑賞前に「千と千尋の神隠し」を見せていたのですが、それと比較して、背景にキャラが馴染んでいないと。

宮崎駿感が薄い

全体的に宮崎駿感が薄かったように感じました。

アクションがあっても、ファンタジー要素があっても、けっきょく何か弱いと感じたのは宮崎駿感が足りなかったからではないでしょうか。

これまで宮崎監督は自分で描く監督でした。

過去形なのは、事前情報としてプロデューサーの鈴木さんが、今回は宮崎駿は絵コンテに集中して作画監督がそれを具現化するスタイルだと語っていました。

今回の作画監督本田雄さんで凄腕アニメーターであることは間違いないんですけど、やはり宮崎監督が全盛期のようにバリバリ描いていないとなると、宮崎駿感は薄くなるような気がします。

例えば今回の作品、息子の吾郎が監督だよって言われても、知らなければ、へぇ、なかなかいいの作ったやん って信じてしまうかもしれません。

僕は宮崎監督の作品はストーリーが破綻しているものが多いと思っているんですけど、それでも部分的に魅力的な映像が続いて最後まで見れちゃうのは、〝宮崎駿の魔法〟の力だったんだなと今回の作品を通して強く感じました。

監督ももう80代、偉大な魔法使いも歳には勝てないということでしょうか。

今作品がジブリの崩壊を思わせる内容だったのがまた寂しさに拍車をかけました。

 

以上が僕の感想です。

とはいえ、宮崎駿監督が作り上げてきた作品はテレビシリーズを含め今後も色褪せることはありません。

僕が小さい頃からおじさんになるまで素晴らしい作品を作り続けてくれて本当にありがとうと言いたいです。

さあて、僕たちはどう生きるか…

2023.07.19追記↓

他の人の評価はどんなもんかな?と思ってTwitterをのぞいたら好意的な評価の方が圧倒的に多くてびっくりしてる😳w

人それぞれ、どういう感想を持ってもいいと思うし、一部でマニアックな楽しみ方をする人もいるだろうとは思うけど、大衆がアートを理解した風な感じになってきているのを見ると、鈴木Pの無宣伝プロモーションは大当たりだったんだと思いますね。